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■「それでも人間か」「それでも日本人か」

最近、朝日新聞2002年6月25日に掲載された加藤周一氏の抜粋文章のコピーを日本語を完璧に理解するフランス人からもらいました・・・


このコピーは大変興味深く、何度も繰り返して読みました。

内容は・・・

昔1930年代の末から45年まで、日本国では人を罵るのに、「それでもお前は日本人か」と言うことが流行っていた・・・と始まります。

当時、軍国日本政府がが作った規格、つまり、戦争に行くのに好都合、団結を強調、個人良心の自由を認めず、そういった規格にはずれたもの(日本人集団に属しない外国人または外国かぶれの日本人)はすべて潜在的jな敵と扱われていたらしいのですが、そんな風潮の中にも例外の人物が存在したわけです。

そのひとりが、白井健三郎。彼を自伝と詞華集の中で回顧した詩人宗左近氏の文章を加藤氏が紹介しているのですが・・・これが、非常に興味深い。

当時、学生であたった宗左近氏が召集令状を受けた歓送会での出来事。当時東大法学部の学生であった橋川文三とその同級生のひとりが、きっかけはわからないが、白井氏に・・・

「それでも日本人か」

と食ってかかった話なのです。
白井氏の
「まず人間だ」と主張に対立して、
「まず人間とは何だい。ぼくたち、まず日本人じゃないか」
「違うね、どこの国民でも、まず人間だよ」
「何て非国民!まず日本人だぞ」

「馬鹿なことをいうなよ。何よりもさきに、人間なんだよ」

こんな"すったもんだ"が続き、暴力沙汰は免れたものの大変な騒ぎだったとか。

加藤周一氏曰く、45年以前の日本国において実に典型的な問答だったそう。

『まず日本人』主義者と『まず人間』主義者との多数・少数関係は現代において逆転したのだろうか・・・

軍国日本は多数の外国人を殺し、多数の日本人を犠牲にし、国土を焼土として、崩壊した。その反省から出来た憲法は人権を尊重する。

人権は『まず人間』に備るので、『まず日本人』に備るのではない。

国民の多数が『それでも日本人か』と言う代わりに『それでも人間か』と言い出すであろうときに、はじめて、憲法は活かされ、人権は尊重され、この国は平和と民主主義への確かな道を見出すだろうと・・・とこの文章を閉じています。





【加藤周一】
評論家、作家、医学博士。参照フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

【白井健三郎】
サルトルなどフランス現代思想の紹介で知られる文芸評論家で学習院大学名誉教授。日本はじめてのバイオリズム研究家。本業は翻訳家の白井 勇治郎(1914~1996) の弟。1998年2月肺がんのため他界。夫人は、 シャンソン歌手の小海智子さん(こかい・ともこ=本名白井とも子、2002年3月13日他界。)

【橋川文三】
評論家(1922-1983)。


【参考サイト】

国際バイオリズム協会
小海智子さん逝く
by hiraidenaoya | 2006-03-23 21:55 | Trackback